うなぎとワシントン条約
ウナギ全種の規制案とCoP20の結果、店への影響【2026年版】
この記事の結論
- ウナギ全種を附属書IIに加えるEUとパナマの案は、2025年12月の締約国会議(CoP20)で反対多数により否決されました。
- 2026年10月時点で、ヨーロッパウナギ以外のうなぎに条約の新しい手続きは加わっておらず、店の仕入れの仕組みは変わっていません。
- 次の締約国会議は2028年です。日本などはシラスウナギの池入れ量の上限による管理を続け、再提案に備えています。
「うなぎがワシントン条約で規制されるかもしれない」。2025年の夏から秋にかけて、こんなニュースを目にした方も多いと思います。EU(欧州連合)などが、ニホンウナギを含むウナギ属のすべての種を、国際取引に許可書が必要な「附属書II」に加えるよう提案したためです。結果は、2025年11〜12月の締約国会議で否決でした。本記事では、条約の基本、提案の中身、会議の結果、日本政府の立場、2026年10月時点のシラスウナギの管理、そしてうなぎ屋の仕入れや価格への影響を、環境省・水産庁・経済産業省の公表資料をもとに整理します。
目次
1. ワシントン条約とは?うなぎとの関係 2. 2025年の提案:ウナギ全種を附属書IIに 3. CoP20の結果と日本政府の立場 4. その後の状況:シラスウナギの管理(2026年10月時点) 5. うなぎ屋・消費者への影響(価格・仕入れ) 6. 猫家FCの場合 7. よくある質問(FAQ)ワシントン条約とは?うなぎとの関係
ワシントン条約(CITES、サイテス)は、絶滅のおそれのある野生の動植物を、国際取引による取りすぎから守るための条約です。うなぎでは、ヨーロッパウナギがすでに対象になっています。一方、国内で養殖されるうなぎのほぼすべてを占めるニホンウナギは、2026年10月時点で対象になっていません。
正式な名前は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」です。水産庁の資料によると、184か国とEUが加盟し、締約国会議(CoP)は2〜3年に1回開かれます。会議では主に、どの種をどの「附属書」に載せるかを話し合います。附属書を変える案は、賛成と反対の票の合計のうち3分の2以上の賛成で採択されます。
附属書は3種類
| 区分 | どんな種か | 取引のルール |
|---|---|---|
| 附属書I | 絶滅のおそれがあり、取引の影響を受けている種 | 商業目的の取引は禁止 |
| 附属書II | いまは必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を厳しく規制しないとそのおそれがある種。掲載種と見分けにくい種(類似種) | 輸出国の当局が出す許可書が必要(取引そのものはできる) |
| 附属書III | 自国の保護のため、ほかの国の協力が必要だと掲載国が求めた種 | 掲載国からの輸出は許可書、それ以外は原産地証明書などが必要 |
出典:水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」(2026年7月)をもとに作成
附属書IIは「取引禁止」ではありません。輸出する国が、科学的な助言などをもとに許可書を出せば取引できます。ただし、許可書を出すかどうかは輸出国の判断になります。
ヨーロッパウナギはすでに附属書II
ヨーロッパウナギは2007年に附属書IIへの掲載が決まり、2009年から取引の規制が始まりました。水産庁の資料では、EUは現在、輸出の許可書を出さないことで実質的に輸出を禁止しているとされています。
なお、国際自然保護連合(IUCN)は2014年に、ニホンウナギを「絶滅危惧IB類」としてレッドリストに載せています(ヨーロッパウナギはより危険度の高い「IA類」)。レッドリストは絶滅の危険度を評価したもので、ワシントン条約の附属書とは別の仕組みです。
2025年の提案:ウナギ全種を附属書IIに
2025年6月、EUとパナマが、ニホンウナギを含むウナギ属のすべての種を附属書IIに加える提案を出しました。すべての種が、すでに掲載されているヨーロッパウナギと見分けにくい「類似種」にあたることが主な理由です。
ウナギ属は世界に19種・亜種がいて、広く食べられているのは主にニホンウナギ、アメリカウナギ、ヨーロッパウナギ、バイカラウナギの4種です(水産庁)。提案は類似種であることに加えて、ニホンウナギとアメリカウナギについては資源の減少も理由に挙げていました。
国際機関の評価は分かれた
会議の前に、3つの機関がこの提案を評価しています。水産庁の資料にもとづいてまとめると、次のとおりです。
| 評価した機関 | 主な評価 |
|---|---|
| 国連食糧農業機関(FAO)の専門家パネル | ニホンウナギもほかの種も、掲載の基準(資源の減少・類似性)に合わない。東アジアでは国際的な資源管理と、種を見分ける実用的な方法で持続的な利用が支えられている |
| CITES事務局 | 全種が、ヨーロッパウナギとの類似性から「類似種」の基準には合う。ニホンウナギとアメリカウナギは資源減少の基準には合わない。そのうえで採択を勧告 |
| IUCNとTRAFFIC | ニホンウナギとアメリカウナギが資源減少の基準を満たすかは、確実には言えない。全種は類似種の基準を満たす |
ニホンウナギとアメリカウナギについて、「資源の減少」の基準を満たすと明確に判断した機関はありませんでした。評価が分かれたのは、見分けにくさ(類似種)を理由に全種を載せるべきかどうかという点です。
CoP20の結果と日本政府の立場
提案は、2025年11月24日〜12月5日にウズベキスタンのサマルカンドで開かれた第20回締約国会議(CoP20)で否決されました。11月27日の第一委員会の投票は賛成35、反対100、棄権8で、12月4日の全体会合で否決が確定しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催 | 2025年11月24日〜12月5日、ウズベキスタン・サマルカンド |
| 出席 | 163か国とEU |
| ウナギの提案 | ウナギ属の全種を附属書IIへ(提案:EU・パナマ) |
| 投票(11月27日・第一委員会) | 賛成35、反対100、棄権8(秘密投票) |
| 結果 | 否決(12月4日の全体会合で確定) |
| あわせて採択 | 各国にウナギ属の保存と管理を促す決議(コンセンサスで採択) |
| 次回 | 2028年、パナマで開催 |
出典:環境省「ワシントン条約第20回締約国会議の結果概要について」(2025年12月8日)、水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」(2026年7月)
附属書を変える案は、投票した国の3分の1を超える反対があると否決になります。ウナギの提案では、反対が投票した135か国の約74%にのぼりました。議場で反対を表明したのは、日本のほか、米国、カナダ、オーストラリア、韓国、中国、インドなどです。賛成の発言は、EU(加盟27か国を代表)、英国、モナコ、イスラエルでした。
附属書への掲載とは別に、各国にウナギ属の保存と管理を促す「ウナギ属の取引、保全及び管理に関する決議」が採択されています。掲載は見送られましたが、各国がウナギの保全と管理に取り組むことは、引き続き条約の場で求められています。
日本政府の立場
日本政府は、この提案に反対しました。水産庁の資料は、提案を「科学的根拠に乏しいもの」とし、外務省・農林水産省・経済産業省・環境省を中心に、EUを含むほかの締約国に働きかけたと説明しています。
日本の主張の柱は、ニホンウナギは資源管理が徹底されていて、十分な資源量があり、絶滅のおそれはない、という点です(農林水産大臣の記者会見、2025年11月21日)。その資源管理は、関係する国・地域が協力して進めてきました。2012年に日本・中国・台湾(チャイニーズ・タイペイ)で協議を始め、韓国も加わった2014年には、養殖池に入れるシラスウナギの量(池入れ量)を直近の量から2割減らすことなどを盛り込んだ共同声明を出しました。
その後の状況:シラスウナギの管理(2026年10月時点)
否決のあとも、ニホンウナギは「池入れ量の上限」を中心に管理されています。2026年6月の4か国・地域の協議では、2028年までの2漁期も日本の上限を21.7トンのままとすることで合意し、2028年のCoP21に向けた協力も確認しました。なお、CoP20で決まった附属書の改正は2026年3月5日に効力が生じましたが、ウナギは含まれていません。
4か国・地域の池入れ上限
シラスウナギは、うなぎの稚魚です。日本で育てられるうなぎは、ほぼすべてが天然のシラスウナギを捕まえて池で育てたものです(くわしくはうなぎ養殖の現状と仕組み)。そこで、養殖池に入れてよいシラスウナギの量に、国・地域ごとの上限を設けています。
| 国・地域 | ニホンウナギ | ほかの種のうなぎ |
|---|---|---|
| 日本 | 21.7トン | 3.5トン |
| 中国 | 36.0トン | 32.0トン |
| 韓国 | 11.1トン | 14.0トン |
| 台湾(チャイニーズ・タイペイ) | 10.0トン | 10.0トン |
出典:水産庁「ウナギをめぐる状況と対策について」(2026年7月)。ニホンウナギの4者合計は78.8トン
2026年6月29〜30日に横浜で開かれた第19回の協議では、次のことが確認されました(水産庁、2026年7月発表)。
- CoP20の結果をふまえ、2028年のCoP21以降に再び掲載が提案される可能性に備えて、不当な貿易制限を避けるために4者で協力する
- 2026〜27年漁期と2027〜28年漁期の池入れ上限は、2014年の共同声明の量(日本は21.7トン)とする
- 上限を超えた場合は、速やかにほかの国・地域に報告し、再発防止策と是正措置も報告する(細かい点は次回の協議で話し合う)
日本は「ニホンウナギの資源は回復傾向にある」として、科学的根拠にもとづく上限の見直しを今後検討する必要があると発言しました。また、卵から育てた人工のシラスウナギは、上限の対象に含めず別枠で管理すると説明しています。
国内のしくみ:許可・報告・取引記録
- うなぎ養殖は農林水産大臣の許可制(2015年6月から)。養殖場ごとに池入れ量が割り当てられ、2026年漁期の合計はニホンウナギ21.7トン、ほかの種3.5トン
- シラスウナギの採捕は、原則として都道府県知事の許可を受けた漁業(2023年12月から)。違反したときの罰則も重くなった
- 2025年12月から「水産流通適正化法」の対象に。全長13cm以下のうなぎの稚魚を扱う事業者に、届出、漁獲番号の伝達、取引記録の作成と保存が義務づけられた
- 2026年9月10日、水産庁長官が都道府県に通知を出し、採捕量の正しい報告の徹底や、産卵に向かう「下りウナギ」の採捕の制限を進めるよう求めた
2026年漁期(2025年11月〜2026年5月)の池入れ量は16.6トンで、平年並みでした。国内の採捕の報告は11.8トン、輸入は5.9トン、輸出は2.4トンです。水産庁は、シラスウナギの取引価格が2漁期続けて下がったとし、前の漁期に池入れしたうなぎの在庫が多く、池入れの需要が弱かったためと推測しています。
アメリカウナギの附属書III掲載は撤回
CoP20とは別の動きもありました。ドミニカ共和国がアメリカウナギを附属書IIIに載せるよう求め、2026年1月7日に効力が生じる予定でしたが、2026年1月3日付けで要請を取り下げました。経済産業省は、アメリカウナギを含む貨物の輸出入に、条約にもとづく手続きは引き続き不要と案内しています。
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うなぎ屋・消費者への影響(価格・仕入れ)
提案が否決されたため、2026年10月時点で、うなぎ屋の仕入れの仕組みや、お客さまがうなぎを買って食べることに、条約による変化は起きていません。ただし、2028年のCoP21で同じような提案が出る可能性はあります。そのときに慌てないよう、知っておきたいことを整理します。
もし掲載されていたら、何が変わったか
附属書IIに載ると、国境を越える取引には輸出国の許可書が必要になります。日本のうなぎは輸入への依存が大きく、水産庁の資料では、2025年の国内供給量6万3,598トンのうち輸入が4万5,987トン(約7割)でした。養殖に使うシラスウナギも、2026年漁期は5.9トンを輸入しています。全種が掲載されていれば、こうした輸入のたびに輸出国の許可書が必要になり、許可書が出なければ輸入できません。日本など4者が「不当な貿易制限」を避けたいとしているのは、この点です。
値段は条約ではなく、シラスウナギの量や在庫で動いている
否決で新しい規制は加わっていないので、2026年10月時点で条約が直接うなぎの値段を動かしているわけではありません。シラスウナギの取引価格は、採れ具合や池入れの需要、在庫などで上下しており、2026年漁期は2漁期続けて下がりました。値段が決まるしくみはうなぎの価格はなぜ高騰する?、供給が細るリスクへの備えはシラスウナギ不漁と供給リスクで解説しています。
うなぎ屋がいまできる備え
- 仕入れ先に、うなぎの種類(ニホンウナギかどうか)と産地を確かめられるようにしておく。ルールが変わったとき、どの商品に影響があるかすぐ分かる(産地表示の考え方は国産うなぎの特徴と選び方)
- ヨーロッパウナギの製品を扱う場合は、すでに条約の手続きの対象であることを知っておく
- CoP21に向けた動きは、水産庁の「うなぎに関する情報」や環境省・経済産業省の発表で確かめる。報道の見出しだけで判断しない
- 仕入れ先を一つに頼りすぎない、固定費を軽くしておくなど、供給の変化に強い店の形にしておく
- お客さまに聞かれたら、「2025年の会議で否決され、いまも普通に食べられる」と事実で答えられるようにしておく
消費者にとっては
ワシントン条約が決めるのは国境を越える取引のルールです。ニホンウナギは附属書に載っていないので、お店やスーパーでうなぎを買う・食べることに条約による制限はありません。資源を守る取り組みとしては、養殖の池入れ量の上限や、シラスウナギの取引記録の義務づけが進んでいます。
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猫家FCでは、うなぎの仕入れは本部が担います。加盟店がうなぎの仕入れ先を自分で探す必要はありません。
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