経営ノウハウ M&A 事業承継 2026年6月6日

飲食店のM&A完全ガイド
売却相場・買収手順・成功事例【2026年版】

後継者不在・コスト高騰・人手不足を背景に、飲食店のM&A(事業譲渡)は急速に拡大しています。「廃業するくらいなら売却したい」「他店舗を買収して規模拡大したい」そんなニーズに応えるのが飲食店M&Aです。本記事では2026年最新の市場動向、売却相場、企業価値の算定方法、M&A成立までの8ステップを徹底解説。仲介会社・マッチングサイトの選び方、フランチャイズ加盟という選択肢との比較まで、事業承継のあらゆる選択肢を網羅します。

飲食店M&Aの市場動向(後継者不在・廃業増加の背景)

日本の飲食店業界では、経営者の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっています。中小企業の後継者不在率は約5割(帝国データバンク2024年調査で52.1%、2025年は50%前後で推移し、調査開始以来の低水準)とされ、飲食業はその中でも特に承継が困難な業種に位置付けられています。コロナ禍・原材料高騰・人件費上昇が続いた2020年代以降、廃業を選ぶ経営者が急増する一方で、「廃業ではなく売却で次世代に引き継ぐ」M&Aの活用が広がっています。

飲食店M&Aが増加する4つの背景

スモールM&A市場の急成長

500万円〜5,000万円規模のスモールM&A市場は、ここ数年で取引件数が大きく伸びています。マッチングサイト上には飲食業の案件が数千件単位で常時掲載され、個人経営の居酒屋・カフェ・ラーメン店なども売買対象になっています。「廃業するくらいなら誰かに譲りたい」というニーズと、「低コストで店舗を取得したい」というニーズが、プラットフォームを介して結びつく時代になりました。

買い手の主なプレイヤー

飲食店M&Aの買い手は大きく3つに分類されます。①同業の飲食企業(多店舗展開を狙う中堅・大手)②異業種の事業会社(不動産・小売・ITなど多角化志向)③個人投資家・脱サラ起業家です。特に近年は、個人によるスモールM&A参入が増えており、「会社員から飲食店オーナーへの転身」をM&A経由で実現するケースが増えています。

飲食店を売却するメリット・デメリット

飲食店の売却にはメリットも多い一方、見落としがちな注意点もあります。意思決定の前に、両面を冷静に把握しておきましょう。

売却(M&A)の5つのメリット

売却の主なデメリット・注意点

ポイント

M&Aは「売り急ぎ」ほど不利になる典型例です。業績が黒字のうちに準備を始めるのが鉄則。決算書3期分の整備、取引先・賃貸契約の見直し、メニューや原価率の改善など、売却前の磨き上げで査定額が1.5〜2倍になることも珍しくありません。

飲食店M&Aの売却相場(業態別・売上規模別)

飲食店のM&A売却相場は、年間営業利益の2〜5年分が一般的な目安です。業態・立地・収益性によって幅がありますが、相場感を持つことで現実的な価格設定が可能になります。

規模別の売却価格相場

規模 年商目安 売却価格レンジ 主な買い手
個人小規模店 2,000〜5,000万円 300〜2,000万円 個人投資家・脱サラ起業家
個人中規模店 5,000万〜1億円 1,000〜3,000万円 同業中堅企業・個人
法人単店舗 1〜2億円 3,000万〜1億円 同業大手・異業種参入
多店舗法人 3億円〜 1億〜10億円超 大手チェーン・ファンド

業態別の売却価格傾向

業態 営業利益倍率 備考
居酒屋 2〜3年分 夜営業中心で評価が抑えめ
カフェ・喫茶 2〜4年分 立地次第で評価が大きく変動
ラーメン店 3〜4年分 ブランド力で高値も狙える
焼肉店 3〜5年分 客単価高く評価されやすい
うなぎ・高級和食 4〜5年分 希少性・技術継承で高評価
テイクアウト専門 3〜5年分 固定費が軽く利益率高

価格を左右する主な要素

同じ営業利益でも、立地(駅近・繁華街)、ブランド力、SNSフォロワー数、顧客リスト、リピート率、設備の新しさなどで価格は大きく変わります。特に「居抜きで即営業可能」「店長以下スタッフ全員残留」「常連客のリピート率が高い」といった条件が揃うと、相場の上限を超える評価も可能です。

飲食店の企業価値算定方法(営業権の出し方)

飲食店の企業価値(M&A価格)は、複数の算定方式を組み合わせて決定されます。代表的な3つの方法を解説します。

方法1:時価純資産+営業権法(最も一般的)

飲食店のスモールM&Aで最もよく使われる方式です。「時価純資産」+「営業利益の2〜5年分(営業権=のれん代)」で算定します。たとえば時価純資産500万円、年間営業利益300万円の店舗なら、500万円+(300万円×3年)=1,400万円が目安価格になります。

方法2:DCF法(将来キャッシュフロー割引)

将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて算定する方法で、中堅以上の法人M&Aで採用されます。計算は複雑ですが、将来性を加味した価格になるため、成長中の店舗には有利です。

方法3:類似取引比較法(マルチプル法)

同業他社のM&A事例から、EBITDA倍率や売上倍率を参照する方法です。飲食業のEBITDA倍率は3〜6倍が目安。マッチングサイトに掲載される類似案件の価格帯も、参考指標になります。

営業権(のれん代)の出し方

営業権は「目に見えない価値」を金額化したもので、ブランド・顧客基盤・立地・スタッフ・許認可などが評価対象です。算定式は「営業権 = 直近3年平均営業利益 × 評価倍率(2〜5)」が標準。評価倍率を上げる要素として、安定した黒字、リピート率の高さ、独自のレシピや調理技術、SNS集客力などがあります。

赤字店舗の評価方法

赤字店舗の場合、営業権はゼロまたはマイナスとなり、純資産価値+居抜き設備の残存価値での評価になります。ただし「立地が稀少」「居抜き取得で開業コストを大幅圧縮できる」といった魅力があれば、設備評価額に上乗せが入ることもあります。詳細は飲食店経営失敗の原因と対策もあわせてご覧ください。

M&Aによる売却の8ステップ(仲介選定→デューデリ→契約まで)

飲食店M&Aは、おおむね6ヶ月〜1年かけて以下の8ステップで進みます。順番と所要期間を把握しておくと、計画的に進められます。

ステップ1:M&A仲介会社/マッチングサイトの選定(1〜2週間)

規模や売却希望額に応じて、仲介会社かマッチングサイトを選びます。3,000万円以下のスモールM&Aならマッチングサイト5,000万円以上の法人M&Aなら仲介会社が一般的な使い分けです。

ステップ2:秘密保持契約(NDA)の締結(1週間)

仲介会社や買い手候補との間で秘密保持契約を結びます。従業員や取引先に知られないよう情報管理を徹底することが重要です。

ステップ3:企業価値算定・売却方針の策定(2〜4週間)

仲介会社による初期査定を受け、希望価格・売却条件・引き継ぎ期間などを決めます。「店名を残すか」「従業員を全員残すか」など、譲れない条件を整理します。

ステップ4:買い手候補の探索・マッチング(1〜3ヶ月)

仲介会社のネットワーク、マッチングサイトを通じて買い手候補を探します。複数社からオファーを取ることで、価格と条件を引き上げられます。

ステップ5:トップ面談・条件交渉(2〜4週間)

有力候補との面談を行い、互いの理念や条件をすり合わせます。「価格」だけでなく「理念の継承」「従業員の処遇」も交渉の重要要素です。

ステップ6:基本合意契約(LOI)の締結(1〜2週間)

主要条件で合意したら、基本合意書を結びます。独占交渉権・スケジュール・買収方式などを定めます。

ステップ7:デューデリジェンス(DD)(1〜2ヶ月)

買い手が会計・税務・法務・労務・事業面で店舗の実態を調査します。決算書・契約書・許認可・労務管理などの書類整備が必須です。

ステップ8:最終契約・クロージング(2〜4週間)

最終条件を確定し、最終契約書を締結。代金受領と事業引き渡しを行います。その後3〜12ヶ月の引き継ぎサポート期間を経て、M&Aは完了します。

準備すべき必要書類

M&Aを円滑に進めるため、決算書(3期分)・試算表・賃貸借契約書・営業許可証・従業員名簿・主要取引先リスト・メニュー&原価表を早めに整備しましょう。書類整備の質が、査定額と買い手の信頼に直結します。

廃業の前に「他の選択肢」を検討してみませんか?

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うなぎテイクアウト専門業態への切り替えで再生したオーナーも多数います。

M&A仲介会社・マッチングサイトの選び方

飲食店M&Aの相談先は大きく分けて3種類あります。規模・希望価格・スピードによって最適な選択が変わります。

選択肢1:M&A仲介会社(大型案件向け)

専門のアドバイザーが売り手・買い手の双方を支援する伝統的な形態です。5,000万円以上の中堅〜大型M&Aに強く、ネットワーク・交渉力・契約サポートに優れます。一方、手数料はレーマン方式で最低500万〜2,500万円と高額で、小規模案件には不向きです。

選択肢2:M&Aマッチングサイト(スモール向け)

TRANBI、BATONZ、M&Aサクシードなどのプラットフォームで、個人や中小事業者が自分で案件を掲載できます。成約料3〜5%・最低10万円程度と低コストで、500万円〜5,000万円規模のスモールM&Aの主流になっています。デメリットは、契約書チェックや交渉を自分で行う必要があることです。

選択肢3:商工会議所・事業承継・引継ぎ支援センター(公的機関)

各都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターは、無料で相談に応じてくれる公的機関です。中小企業の事業承継M&A支援に特化しており、特に小規模個人店舗の承継相談に強みを持ちます。手数料負担を抑えたい場合に有力な選択肢です。

相談先選びの3つの判断軸

判断軸 仲介会社 マッチングサイト 公的機関
適正規模 5,000万円以上 500万〜5,000万円 規模問わず
手数料 500万〜2,500万円以上 成約額の3〜5% 無料
サポート範囲 フルサポート 掲載・マッチング中心 相談・紹介中心
スピード 6〜12ヶ月 3〜6ヶ月 6〜12ヶ月
専門性 自己責任

飲食店M&A vs フランチャイズ加盟(事業継続の選択肢)

「廃業を避けて事業を続けたい」「店舗を引き継ぎたい」と考える場合、M&A以外にもフランチャイズ加盟による業態転換という選択肢があります。両者を比較してみましょう。

状況別の最適な選択肢

状況 おすすめの選択肢 理由
後継者がいない、経営から退きたい M&A売却 創業者利益の現金化が可能
赤字だが事業は続けたい FC加盟で業態転換 本部ノウハウで再生
立地は良いが業態が古い FC加盟でリブランド 居抜きを活かして低投資で再生
店舗を拡大したい 他店舗をM&A買収 立地・既存顧客を一気に獲得
初めての飲食業 FC加盟または既存店M&A ノウハウとリスク低減

フランチャイズ加盟による業態転換のメリット

赤字店舗の場合、M&Aでは買い叩かれるリスクがありますが、FC加盟で業態転換すれば事業継続と再生を同時に実現できます。詳しくはフランチャイズ加盟のメリット・デメリット飲食店経営の基本もあわせてご覧ください。

猫家FCが業態転換に強い理由

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「廃業・売却」の前に検討すべき選択肢

解約金や原状回復で多額の出費が発生する廃業を避け、事業継続を前提とした業態転換を選ぶオーナーが増えています。猫家FCはM&Aの代替案として、現状の店舗・物件を活かした再生プランを提案しています。FC契約後に途中で続けられなくなった場合の対応については、フランチャイズ契約解約ガイドもご参照ください。

事業承継・廃業回避でお悩みの飲食店オーナー様へ

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よくある質問(FAQ)

飲食店のM&A売却相場はいくらですか?
飲食店のM&A売却価格は、年間営業利益の2〜5年分が一般的な相場です。個人経営の小規模店舗で300万円〜2,000万円、年商1億円規模の中堅店舗で3,000万円〜1億円、複数店舗展開の法人で1億円以上のケースが多くなります。立地・業態・収益性・ブランド力で大きく変動するため、複数の仲介会社で査定を取ることが重要です。
赤字の飲食店でもM&Aで売却できますか?
赤字でも売却可能なケースは多数あります。立地が良い・居抜き設備が充実・ブランドや顧客基盤がある・許認可や資格が魅力的、といった要素があれば買い手が見つかります。ただし営業権(のれん代)はつかず、純資産価値や設備の残存価値での評価になります。赤字理由を明確にし、再生可能性を訴求することが成約の鍵です。
飲食店M&Aにかかる期間はどのくらいですか?
飲食店M&Aは、仲介会社への相談から成約までおおむね6ヶ月〜1年が一般的です。小規模個人店舗のスモールM&Aなら3〜6ヶ月で完了するケースもあります。買い手探し(2〜4ヶ月)、デューデリジェンス(1〜2ヶ月)、契約交渉・クロージング(1〜2ヶ月)が主な工程です。早期売却を希望する場合は、マッチングサイト併用が効果的です。
M&A仲介会社の手数料はいくらかかりますか?
M&A仲介会社の手数料は、レーマン方式(取引額に応じた料率)が一般的で、5億円以下の部分は5%が標準です。最低手数料500万円〜2,500万円を設定している会社が多く、小規模飲食店には負担が大きい場合があります。一方、マッチングサイトは成約料3〜5%・最低10万円程度と低コストで、スモールM&Aに適しています。
飲食店を廃業するよりM&Aの方が得ですか?
多くの場合、廃業よりM&Aの方が得になります。廃業すると原状回復費(坪10〜30万円)・解約違約金・廃棄費用などで100〜500万円の出費が発生する一方、M&Aなら売却益が得られます。さらに従業員の雇用維持・顧客への継続サービス・取引先との関係維持といった社会的価値も守れます。事業継続が難しい場合は、廃業の前に必ずM&Aを検討しましょう。
従業員にM&Aを伝えるタイミングは?
基本合意(LOI締結)後、デューデリジェンス前後でキーマンに先に伝え、最終契約直前に全員へ告知するのが一般的です。早すぎる開示は離職や情報漏洩のリスクを高めます。買い手と相談しながら、雇用継続条件と退職金処遇を整えた上で、誠実に伝えることが信頼維持の鍵です。